今日もしおれ気味。

前向きも良いけど、私は今日も大体しおれ気味。

ヒューマンエラーは起こりうる

今回、11歳の入院中に起きた2度目のアナフィラキーシショックについて書く上で最初に申し上げておきたいのは、私は医療者を非難したいわけではないということです。

 

アナフィラキシーは突然に

【序】

その日は採血をする日でした。

点滴ルートがあるのでそこから抜こうということで、看護師さんが2人ほど必要な器具を持って登場。

新人看護師さんとベテラン看護師さんのコンビ。新人さんが点滴ルートからの採血の練習をする模様。

 

昔の点滴ルートは今みたいにコンパクトではありませんでした(当時としては最先端ですが)。針を固定するテープも今のような透明フィルムではなかったので、一度刺して固定をすれば、針そのものの状態は確認できません。

また子どもだったからということもあったとは思いますが、チューブは長く、三方活栓(だったはず)だってゴツい。

それでもルートからの採血はざっくり書けば

三方活栓を開いて→採血して→血液を戻すのと一緒にヘパリン(病院によっては生食)ロック というもの。

看護師さんからすれば慣れない間は難しいのかもしれませんが、患者から見れば簡単そうに思えます。

 

ところが緊張からか、新人看護師さんはまごついていました。

母はずっとそばで見られてるのも嫌かなとカーテンの向こうへ(当時私がお世話になった病棟では、昼間はカーテンは開け放たれていますが、処置中は閉めます)。

 

なんじゃかんじゃと先輩看護師さんの指導を受けながら採血終了。

私も看護師さんたちもなんとなくホッとした気がしました。

 

【破】

「ぱきらちゃん、それじゃあね」と言われて看護師さんが出ていき、母が戻ってきました。

と、突然私の右手の指が痒くなり始めます。とても嫌な感じの痒さ。私、この痒さ知ってる…。

「お母さん、痒い」

しゃべることができたのはここまでです。

とにかく痒い。皮膚はもちろんのこと、しかしそれよりもなによりも、体の内側、内臓すべてが痒い。止まらない。

私にナースコールを押すゆとりなどありませんでした。

 

母がすぐにアナフィラキシーショックだと気がついてナースコールを押すも、返ってきたのは「はーい、ちょっと待ってね」というのんきなもの。

だって私は日ごろ急変しない子だったから、看護師さんからすれば慌てる必要もなくて。

「誰か来て!!!」

母がナースステーションに走っていったのかどうか私は覚えていませんが、のちに同室のそうくんによると「おばちゃんがあんな叫んでるの初めて聞いてびっくりした」らしく、絶叫に近かったのではと思われます。

 

私のベッドをたくさんの人が取り囲んでいるのはわかりました。

ガラガラと、あまり使用していただきたくない器材が運ばれてくる音もします。

先生も来ました。

「ぱきらちゃん、わかるー?」

と言われて返事をしようにも声が出ない。喉もすごく痒いんだもん。

私自身は意識を手放した認識はないのだけれど、後で聞くと意識を失っていたとか。

いやぁ、ひどい目にあいました…。

 

同室の付き添い入院中のお母さんによれば、私の採血をした新人看護師さんはただただ泣いていたとか。まあそりゃそうだよなぁ…。

 

このときほど、母がいてくれて良かったと思ったことはありませんでした。

母がいなければナースコールを押すこともできないまま、私はなかなか発見されなかったでしょう。そして最悪の事態へ…という世にも恐ろしい結末が待っていたと思われます。 

 

【急】

1度目の、術後すぐのアナフィラキシーショックの原因はとある抗生剤の影響ということがハッキリしていました。術後の抗生剤の点滴を開始した途端のショック。疑いようがありません。

 

では今回は?

そもそも点滴ルートからの採血でアナフィラキシーショックが起こること自体おかしい。新人看護師さんがもたもたしたとしても、おかしい。

その原因はなんだったのか。調査が行われました。

 

結果、原因不明

 

採血の際に何らかの抗生剤か薬剤が混入したのは間違いないが、それが何であるのか、どういう経路で入ったのかは不明。

これが最終的な結論でした。

 

ミスを隠したいとかそういったことはなく、私が今後何の薬剤に反応する恐れがあるのかを把握するためにもと、かなりいろいろと調べてくれたようなのですがサッパリわからないままでした。

 

先生は「痛い思いをするのはかわいそうだからとルートからの採血にしたのに、結果的にもっとかわいそうなことをしました」と言っておられたとか。

 

 

私は謎のアナフィラキシーショックを起こし、その原因がわからないまま30年超が過ぎました。

あれ以降、ルートからの採血が行われることはなくなりました。

病院が変わっても、そのときの話をしてルートからの採血はなるべく控えてもらっています。

 

そしてあれ以降今に至ってもなお、私はヘパリン(や、生食)ロックが極端に怖いのです。注入している最中にヘパリンや生食のにおいが鼻の奥の方までするときなどは、特にぞわぞわします。

 

一度、10代後半か20代前半の頃に救急外来で当時の主治医に点滴ルートを確保してもらったことがありました。

薬剤(抗生剤ではない)を流し始めた途端に全身に薬剤が広がるのがわかり、鼻の奥で強いにおいを感じたときは「あ、これやばい」と思いました。

で、「先生、これ外して!」と叫ぶとともに後ろにひっくり返ったことがあります。

すぐに治まったけど、先生びっくりしてました。

(私もびっくりしたけども)

 

先生のミスというよりは、何らかのものに反応したのでしょう。

先生はアルコールを疑ったらしく、その後しばらく採血のたびにイソジンでまっ茶っ茶に消毒されることになりました。

 

でもそれも、結局何に反応したのかは謎のまま(アルコールも平気)。

 

私…

 

ミステリアスぱきら ですよね。

 

…いや、そんなアホなこと言ってる場合か。

 

ともかく私は若干厄介な体質であり、大いに面倒くさい患者となりました。

当時の主治医はこれ以降、私への薬剤投与を必要最小限に留めるようになりました。

 

ミスは起こりうる

そんなこんなで飲み薬も点滴にも反応しがちな私。

大人になって何度目かのアブレーションをすることになりました。

 

医師(現在お世話になっているハンサム主治医ではありません)から同意書をサインする前の説明が行われます。

医師「えーと、これで終わりかな。アレルギーなかったよね?」

私「△△(抗生剤の名前)でアナフィラキシーとお伝えしてましたが」

医師「え!?本当に!?△△系のやつオーダーしてる!」

私「ええ!!やめてください~。アブレーションどころじゃなくなりますから」

医師「アレルギーの話、聞いてたかな?」

私「はい、言ってましたし(入院の際提出する問診票のような)紙にも書きました」

医師「そうか…。ごめんごめん。でも聞いて良かった〜」 

私「言って良かった〜」

 

先生たちが受け持つ患者は多くて。

こういうことはあってはならないことだけれど、ありがちなことでもあります。

でも私は先生以外にもショックついて話していましたし、聞かれていました。このときは緊急入院でもなかったので、このオーダーミスを指摘する人がいなかったことは少し残念に思いました。

 

これから書くことは大したミスともいえないでしょうし、患者経験の長い人ほどこういう経験はされていると思います。むしろあるある話。

 

例えば、入院中に看護師さんから配られる薬。

明日の朝はストップと言われていたのに配られるとか、待てど暮らせど来ないとか。

そもそも先生が処方するのを忘れることも(薬剤処方箋記入を研修医に任す先生もおられ、たまにこういうことがあります)。

自己管理をさせてもらえるようになればそれほど問題ありませんが、小さなお子さんやかなり年配の方だと無理なので看護師さん頼みです。間違っていること自体気が付かないケースもあるでしょう。

 

あと、外来でもたまーにありますよね。

受け取った薬の中に「…これはどちら様の薬でしょうか」というものが混じっていることや、薬の数がちょっと合わないとか。

私は外来で受け取った薬は必ず数まで確認してから帰るようにしています。

また受け取りに行くのは嫌…。

 

 

 入院中の検査だと、ときどき検査そのものをすっかり忘れられていることもあります。

「今日〇〇って聞いてたけど…」というと「あ!ごめん!」とか。

あるいは、例えば24時間蓄尿しなければならないのに(検体として必要らしい)、普段朝~翌朝までで処分してしまう流れでつい同じように処分されてしまい、一から検査やり直しとか。

 

検査に連れて行ってくれた車いすの酸素ボンベが残ゼロで、ただただカニューラを鼻に突っ込んでただけだったとか(私はそのレベルの酸素吸入で良いから笑い話で済みますが)。

 

細かいことを言い出せば、きっともっとたくさんあるのではないでしょうか。

 

私は、どんなに信頼している先生や看護師さんだとしても、人間である限りミスを起こしてしまう可能性がある、と思っています。

 

正直、私のアナフィラキシーショックレベルの経験をされている方もそこそこおられるはずで、さほど特別なことではないだろうと思っています。

とはいえ私は、ああいう形でアナフィラキシーショックになるのは二度とごめんです。

 

今はダブルチェックや、入院中はネームバンドのバーコードチェックもあります。

おそらく昔よりはるかにミスは減っていると思います。

でも、十分に気をつけていても、時間的ゆとりや人員確保ができていなれけば「あ!」ということは起こりえます。

 

 だから私は

医師や看護師を信頼はしても信用しすぎない

ようにしようと思っています。

 

それは決して医療者に対して失礼なことではなくて、お互いが治療に万全に臨むために大切な意識であると思っています。

ということで、疑問に思うことや納得のいかないことは(基本的には小心者なので緊張しつつ)確認するようにしています。そこで間違いが見つかることだってあります。

 

処置中や手術中は患者自身で防ぎようもないけど、でも。

患者側がいつも細かいことを聞いていると、割と注意を払ってくれるようになるのは事実です(クレーマーになるのとは違います)。

 

 

私は医療者に対して尊敬の念を持っています。

でも神様のように見える医師も、医師に言えない気持ちを聞いてくれ支えてくれる看護師も、患者側と何ら変わらぬ同じ人間なのだということを忘れてはいけないとも思っています。

 

人間が人間である限り、ヒューマンエラーはなくならない。

そう考えています。