入院は続くよこれからも(前編)
先天性心疾患で入院したことがない、という人を私は見たことがありません。
むしろ数えきれないくらい入院経験がある人の方が多いのではないでしょうか。
もはや入院スペシャリストと言っても過言ではないだろうと、比較的真面目に思っています。
さて、個人的な考えですが、先天性心疾患の入院には大きく分けて2種類の入院があると考えています。
前提としてあるのは「生きるための入院」です。
先天性心疾患(Congenital Heart Disease:CHD)患者は何らかの治療を施さなければ死に至るケースが多くあります。医師たちは救命のために尽力されます。ということで、いつだって生きるために入院します。
加えて、以下の2種類に分かれるのではないでしょうか。
①成長のための入院
生まれたときから入院することの多いCHD患者。
成長し年齢を重ねられるようするためには、手術などの大きな治療や投薬を行う必要があります。
就学年齢になるまでに段階的に手術を行うお子さんも多いのではないかと思います。
また、中学生や高校生となり身長や体重が変化することで、入院して薬の種類や量を調整することもあります。成長に伴う心臓への負荷を軽減するために、場合によっては手術もあるでしょう。
救命はもちろんのこと、その先にある社会生活でのQOL(Quality of Life:生活の質)向上に向けて治療が行われます。
もちろんそれぞれの体調や病状で異なりますが、こうした入院を私は、成長のため・大人になるための入院だと思っています。
②現状維持のための入院
もう一つは 成長した体(心臓)の状態をなるべく今のまま保ち続けるための入院です。
大人と呼ばれる年齢に達して以降の入院はほぼこれに当たると考えています。
成長のために手術をして状態が安定したとしても、大人になれば何らかの不都合が生じます。
心臓や体にメスを入れてるんですもの。もともとのいわゆる健康体とは違うのだから、少しずつほころびが出てきて、だんだんと体調が悪くなったとしても仕方ないような気がします。
とはいえ、落ち着いて成長できていればできているほどに、その事実を受容するには時間がかかるでしょう。その不調で病院を訪れるまでは元気だった…そういう人ほどその衝撃は大きいのではないでしょうか。
(もちろん、私のようにどっちかというと病院とお友だちなタイプも、だんだんと衰えていく自分自身を受け入れることは簡単ではありません)
現状維持のための入院では投薬治療が多いでしょうが、手術になるケースもあります。
手術も多岐にわたり、アブレーションや塞栓術、ペースメーカー埋め込みや開胸を伴うハイリスクな手術もあります(まあ、どれもこれもリスクのない手術などないのですけどね~)。
生きている以上、加齢に伴う体調不良、不整脈の出現や悪化は避けられません。
肝臓や腎臓、肺など多くの臓器の働きが悪くなるのも、一般のいわゆる健康な人に比べれば早いと考えられます(薬の副作用で出現する体調不良も数知れず…)。
手術によってグイッと体調が回復される方もおられる一方で、状態によっては在宅酸素の導入や車いす利用を始める方もおられます。
また、体調が悪くなり入院しても、落ち着いたら退院する…という対症療法で終わるケースも少なくありません。
今より悪くしない。可能なら今よりちょっとだけ回復させる。あくまでも、少しでも体の状態を安定させ、現状維持が目的の入院です。
そしてこうした入院の場合、本人の意思表示が可能な場合は本人に決定権があります。
☆
親御さんが大きく関わる入院は
①成長のための入院 だと思われます。
②現状維持のための入院 であっても親御さんにとって一大事で心配だとは思いますが、成長し、自分の意思表示がはっきりできる場合は治療方針の決定権は本人にあります。
本人の葛藤や決断を見守るという立ち位置に変化するでしょう。
と、今回の記事はここまでです。
巻物ができるんじゃない?というくらいに長文になってしまいましたので、前後編に分けました。よろしければ、後編もご覧ください。